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半兵ヱ TOP PAGE >> 昭和の思ひ出 >> 第2話 「駄菓子屋」

昭和の思ひ出
昭和のお話
第2話 「駄菓子屋」

 今回のお題は「駄菓子屋」でございます。昭和の子供達にとりまして、最も思い出深い記憶が駄菓子屋ではないかと思います。昭和の時代、駄菓子屋は日本中にたくさんございました。小生の頃は、安いもので1個2円のヌガーなるキャンディーがございましたが、大体のものは5円〜10円の間で販売されておりました。小生の初めてのお小遣いは、1日5円。つまり、ヌガーという歯にくっつく厄介なミルク味のキャンディーなら2個も買え1円余るのでございました。
 しかし、駄菓子屋の魅力はキャンディーでもオモチャでもなく「クジ」にあったように思います。ただ商品を買うだけより、クジを引いて商品を当てることにその醍醐味があったのでございます。駄菓子屋には様々なクジがございました。「甘納豆クジ」「えびせんべいクジ」「スーパーボールクジ」・・。そしてクジの種類も結構ございました。四角い厚紙についているミシン目の入った紙を剥がし、中に「特等賞」などと書かれておりますクジ。商品のフタの裏に「アタリ」などと書かれておりますタイプ。紙をなめると「スカ(ハズレのこと)」などと文字が浮かび上がってくるもの。小さな甘納豆の袋の中に「1等賞」などと書かれた紙が入っておりますもの。アイスキャンディーの棒に「ホームラン!もう1本!」などと刻印されているもの。糸つり飴のようなもの・・。
 糸つり飴とは、タコ糸の先にイチゴやミカンなどの「果実の形」をした飴が付いていて、その糸は数十本の束になっているのでございます。そして、その糸の束から一本を引っ張り、動いた(釣れた)飴が自分の飴となるクジでございます。しかし、その糸束の真ん中を紙の筒が束ねておりますので、どの糸を引けばどの飴が当たるかは解らない仕掛けになっているのでございました。アタリは何かと申しますと、ミカンの実の3倍くらいある化け物ミカンの実でございました。しかし、今考えてみますと、あれは化け物ミカンではなくオレンジの実でございました。そして、もっと大きな大アタリはミカンの5倍くらいある大化け物ミカンの実でございます。しかも色はミカン色ではなく黄色み掛った白色でございます。まさしく大化け物ミカンそのものでございました。しかし、これも冷静に考えてみますと、大化け物ミカンではなくグレープフルーツの実でございました。
 駄菓子屋の店番をしておられたのは、大概の場合お婆様でございました。おそらく、おじい様は外に仕事に行かれていたのではないでしょうか。なるほど考えてみますと、この商売は中々大変な商売だったのだろうと大人になった今では想像できるのでございます。
 駄菓子屋は学校が終ってから繁盛します。お客様は近所の悪ガキどもでございます。しかも、ピークは夕飯までのほんの数時間。狭い店内は満杯にはなるのですが、1人10円くらいの資金しか持っていないお客差様は、厄介なことに店にきてから何を買おうか考え始める習慣をお持ちでございます。10円玉を握り締め、1時間でも平気で迷うのでございます。駄菓子屋はそんな質の悪いお客様を相手にしていた非常に効率の悪い商売なのでございました。おじい様が外へお仕事に行かなければならないのは当たり前のことだったのでございます。
 しかし、そんな事情などお構いなしの悪ガキどもは、駄菓子屋で様々な悪さを働くのでございました。実は、小生が犯罪に手をそめたのが駄菓子屋でございました。しかも計画的犯行でございます。
 その日は、駄菓子屋へ誰よりも早く行かなければなりません。他の知らない子供達に先を越されると犯行は中々実行できません。学校が終ると、共犯の仲間と駄菓子屋の前で待ち合わせでございます。やることはただひとつ。学校から全速力で家まで帰り、集合場所でございます駄菓子屋まで猛ダッシュで集まることでございます。そしてお店の中を覗いて「シメシメ・・まだ誰も居ないぞ!」と心の中で呟きます。普通に開けると「ガラガラッ!」と大きな音がする建付けの悪い引き戸を、静かに、静かに、息を殺して、そっとそっと開けるのでございます。そして、こっそりとお店の中に入ります。
 何をやるのかと申しますと、こっそりクジを2〜3枚コブシの中に入れたり、糸つり飴のアタリの化け物ミカンの実を引っ張ってみて、どの糸がアタリか見極め、その糸を他の糸よりもほんの少し長く出しておくのでございます。これらの犯行時間、わずか15秒程度・・。
 「くださーい!」大きな声で奥に向かい叫びます。無言のまま無愛想なお婆様が出て参ります。「今日は何をやろうかなー」と言いながら糸釣り飴をやります。お婆様が飴の束を手に持ちこちらへ糸を向けます。少し長い糸を引きます。「やった。アタリだ!」と歓声を上げます。「えーっ、いいな!」と共犯者達はアリバイ工作にはしります。完全犯罪ひとつ成立。「次は何をやろうかなー」と言いながらお婆様の目を盗み、手の中にある3枚のクジをめくります。アタリがあれば2つ目の犯行環境が整います。「ヨーシ!クジに挑戦だ!」といって5円玉をお婆様に渡し、クジを1枚とります。そしてしばらくして「やった!」と叫び、すり替えられたアタリのクジをお婆様に渡します。第二の完全犯罪成立でございます。
 今思うと、大アタリである大化け物ミカンのグレープフルーツの実ではなく、何故それより小さい化け物ミカンのオレンジの実の糸を引っ張ったのか・・。何故クジをたった2〜3枚しかとらなかったのか・・。と謎が残るいかにも昭和の少年らしい犯罪でございます。
 「甘納豆」というクジの話でございます。縦80センチ、横30センチくらいの大きな台紙の上1/3にアタリの景品がホチキスで止められております。そして下2/3には縦10センチ横5センチくらいの甘納豆が入った袋が糊でつけられております。5円払い、甘納豆の袋を1枚はがします。袋の中には甘納豆が入っているのですが、当たると「特等賞」「1等賞」などと書かれた紙も入っているのでございます。つまり、甘納豆の袋がクジを兼ねているのでございまして、アタリの紙が入っていない袋はスカなのでございます。そして当たると、アタリの等級により上についている景品がもらえるのでございます。景品は主にプラスチックでできた安っぽいオモチャが多かった様に記憶しております。
 ある日、小生一味はいつもの駄菓子屋に行き、甘納豆の袋が残り5つくらいなのにアタリの景品が3つ残っていることに気づきました。「やった!5つの中に必ず3つアタリがある」。小生は10円持っておりましたので2つ甘納豆の袋をはがしました。しかし、中にアタリの紙は入っていなかったのでございます。次に、友人がまた2つはがしました。しかしこれもスカ。「おかしいな?」と、頭の悪い少年達には理解できず最後の1つを違う友人が購入・・しかしスカ・・?
 「なんだよ!おばちゃん!どうして当たらないんだよ!」と全員で文句をいうと、お婆様は「ふぅわっはっは・・ふぅわっはっは・・」と笑い出し、アタリは1個100円で売ってやると言われるのでございます。
 半兵ヱでは、以前この「甘納豆クジ」を販売致しておりました。小生は、納品されたそのスタイルを見て、あのときのお婆様の「ふぅわっはっは・・ふぅわっはっは・・」の意味を数十年ぶりに理解できたのでございます。何とアタリは最初から袋に入っているのではなく、別になっていたのでございました。アタリはお店の方が後から入れるのでございます。納入業者の方に理由を聞いてみますと「初めからアタリをいれておいて、もし最初に景品をあてられたら、誰もアタリ景品のないクジを買わなくなります。だから残り少なくなってからアタリをいれるのです」とのことでした。そうなのでございます。お婆様はアタリのクジを入れ忘れていたのでございました。しかも、お婆様はその景品を1個100円で売りつけようとしていたのでございました。
 犯罪に手を染めた昭和の少年、それを知ってか、その少年達から少しでもお金を巻き上げてやろうと原価がゼロ円の景品を高額で売りつける駄菓子屋の詐欺師・・。お互いの騙し合いはしばらく続くのでございました。

 現在、甘納豆クジは半兵ヱにございません。唯一、生産されていた工場が閉鎖されたので、もう甘納豆クジは何処にも売っていないのだと聞きました。残念なことでございます。しかし、甘納豆クジの蘇生は可能だと思います。どの位のロッドがあったらあの懐かしい、甘納豆クジを再度作ってもらえるのでしょうか。甘納豆クジ再製を可能にする位に、半兵ヱが全国にもっともっと増え、あの思い出いっぱいの甘納豆クジが半兵ヱで販売されているシーンを思い浮べると思わず顔がほころびます。「ふぅわっはっは・・ふぅわっはっは・・」と。

ヒーローになれなかった少年
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